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OTHER MUSICーアザー・ミュージック

解決したらブログで別項目設けて書こうと思っているが、先々週末にCitibank からのGarnishment Orderによって、New Yorkの銀行口座の$4,000弱を押さえられた。で、遠因は私が2000年から2003年までNew Yorkに住んでいた約20年前、一時的に勤務していたことで税金が発生したためだと想像される。トラブル解決をお願いしたNYの弁護士ハンクからリクエストされたその当時の資料や住所その他書類を実家まで行って探したり思い出したりで、以来頭の中に色々とNY在住当時のことがぐるぐる回っているところだった。

で、昨日の夜、音楽業界の知り合いがFBで推薦していたのが、このドキュメンタリームービー「OTHER MUSIC」。1995年から2016年までの約20年、New Yorkのイーストビレッジのタワーレコードの目の前で営業していた(だから、店名がOther Music=タワレコにないそれ以外の音楽)伝説のレコードショップ。実は私は、ユニオン・スクエアにあったヴァージンレコード?と、Other Musicの目の前にあるタワレコしか行った覚えがないんだけど(貯金600万円で自腹留学したので、お金がなくてCDやレコードなんて買う余裕はほぼなかった)、今は頭の中がNew Yorkなので行かなきゃと思い、渋谷と表参道の間にあるイメージフォーラムに観に行った。音楽が好きな人、New Yorkの当時の音楽シーンを知りたい人には、間違いなく面白い映画である。これからもいろんな映画館でパラパラ上映されるみたいだし、2019年の製作だからか既にブルーレイは発売されているので、ぜひ観てみてほしい。

この映画を観て思いだしたのは、2000年6月にワクワクしながら渡米し、2003年8月に自立神経失調しかけ疲れ果てて帰国するまで私がNew Yorkに住んでた時の音楽の立ち位置。2000年には、「ナップスター」という音楽ファイルをシェアするというサービスが始まり、留学したロースクールのエンタメ法のクラスでも、その権利の所在について議論になっていた。当時の私は英語での会話能力が足りなくてクラスのディスカッションに全く参加できず悔しい思いをした。そのことがきっかけで、ロースクール卒業後も親に借金してNYに残り(帰国した後に返した)、昼間は働き夜はNYUのエンタテインメントのマーケティングコースに通うことにしたのだった。もちろんエンタメ業界のネットワークを構築したり、もう少しエンタメをマーケティングの観点から勉強しておきたいと思ったこともそのコースを取ることにした理由ではある。

私がNYにいた頃は、又、インターネットラジオの草生期で、通常のラジオやテレビで音源を放送するときには、宣伝の一環として実演許諾料を取らなかったレコード会社が、それに懲りたかインターネットラジオには、まるでいじめのように高額のライセンスフィーを要求する。私は元FMラジオの関係者で当時ネットラジオを始めようとしている知り合いに頼まれてネットラジオが放送できるサーバー探し・交渉から、その許諾料の徴収団体であり、アメリカレコード協会の出先SoundExchangeへの実演権使用料、ASCAPその他著作権団体への著作権使用料支払い代行などの業務を2001年から2006年までやっていた。最初は登録と配信報告書提出だけ、その後どんどん上がっていく実演権使用料。この高額なライセンス料のせいで、インターネットラジオ局の採算が会わず、私が関係していた団体だけでなく、大手のネットラジオ局も次々と番組・ラジオ局閉鎖に追い込まれていた。ご存知の通り、その後日本での音楽配信は携帯電話にダウンロードする形で着うた、着メロサイトが大流行り、私もゲーム会社の新規事業としてその契約書作成や契約交渉に関係したのだが、今は見る影もなし。その後はメジャーなIT企業が続々と音楽配信サービスを提供するようになり、競争を経て、Apple MusicやSpotifyがメジャーな音楽配信サービスとして今も生き残っている。振り返ってみると、そういう音楽の提供・販売の大変革の時期に私はNYに居たんだな。

Other Musicも一時期DigitaliseしたMusicをネットで販売していたらしいが、うまくいかなかったらしい。そりゃあそうだ、Other Musicの特徴は、お店にきたお客さんがものすごい音楽の知識を持った店員さんたちに自分が買いたいレコードのイメージを伝え、店員さんはお客さんのニーズをしっかりと理解してレコードを販売するというコミュニケーション。そういうコミュニティの場をネットサイトで同じように作ってマイナー、インディー音楽を売るのって簡単じゃない。でも、2010年までに大規模レコードショップが次々に破産とか業態変更をした後もまだレコードショップとしてOther Musicが生き残っていたのは、音楽ファンのコミュニティストアだったからだろうし。

映画によれば、Other Musicの共同経営者は、二人とも採算が合わず、従業員に給料を払ったら自分達の収入ゼロということも珍しくなかったらしい。そんな中なんとかショップを続けていられたのは、奥様が生活を支えてからだそうで、あーやっぱり音楽で食べていくのって大変なんだよねと同感する。彼らに限らずアーティスト、演奏家、弁護士だって、エンタメだけで食べていける人は日本ではほんの一部、大半は他の仕事で稼いで、エンタメの仕事は好きだから採算度外視でやっているはず。エンタメロイヤーになりたいと思ってエンタメのプログラムが一番充実していたNYのカードーゾロースクールに留学した私が、日本帰国後何度もエンタメ業界の仕事で挫折したり、業界の人たちに裏切られ落胆させられたのとおんなじなんだよなとつくづく思う。でもまあ今はみんないい思い出。これからも挫けずエンタメの業務も続けていきたいとちょっと思いを新たにする映画だった。

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