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石橋法務行政書士事務所

Winny事件 – 日本で刑事事件の被告になること

知財マネジメント研究会のテーマが面白そうだったので、久しぶりに会場である六本木の政策研究大学院大学(大学院なのか大学なのかよくわからないけど)まで足を運んだ。タイトルは「Winny事件を題材に技術者に伝えていくべきことを考える」、講師はWinny弁護団事務局長=戦略を考えて、弁護団をまとめるまとめ役、でいらした弁護士の壇 俊光さん。Winny事件の記憶もおぼろげな今日この頃、改めてこれをテーマにしたい、と企画してくださった研究会の主催者さんに感謝。

Winnyというのは、2002年から金子 勇氏によって開発が始まった、P2P(Peer to Peer)のファイル共有ソフトの一つである。インターネットで不特定多数の利用者とをやり取りする、いわゆるファイル共有のためのソフトウェアであり、著作物をアップロードし、それを他人と共有して使用、視聴することが可能になる。その著作物が第三者のものであった場合には、第三者の許可をもらわないで他人と共有すれば著作権侵害になるわけである。P2Pのファイル共有ソフトといえば、1999年レコード会社に提訴された同じP2PソフトのNapsterの方が私には馴染みがある。2000年にニューヨークのロースクール、Cardozo の知財プログラムに入学したので、色々なクラスでNapsterは議論のテーマであった。ニューヨークに行くまでほとんど英語を使っていなかった私が、まともに英語で議論などできるわけがなく、科目の一つとして取ったMadia Lawのクラスでは、Nativeや英語が第二言語のクラスメイトのNapsterに関する議論に全く入れずに悔しい思いをしたことが懐かしい。

という自分の思い出話はおいておいて、Winnyの開発者の金子勇氏は、著作権侵害者への幇助による共犯の罪で起訴され、検察側は懲役1年を求刑するのである。が、実際にWinnyを使用して著作権侵害をしていた人たちとは何の面識もなく、京都府警側は、逮捕の理由はソフトウェアの開発行為を理由としたものではなく、著作権違反を蔓延させようとした行為にあるとしている、らしい。蔓延させようとした意図だけで、見たことも話をしたこともない他人が犯した罪に対して幇助が成立してしまうなら、こんなに恐ろしく、おかしな話はない。この事件に関するプロセスの矛盾や騙しに近い形で自白をさせた(金子氏に、「ここにある書面をその通りに写して欲しい」とかなんとか言って、陳述書にあたる文書を警官が渡したらしい。)ことなど、詳細はWikiや壇弁護士のブログに書かれているのでここでは省くが、この刑事事件が、その後新しい技術開発をしていくこの国の技術者や会社が開発を躊躇する要因になったことは確かだろう。

檀弁護士の口から語られる前から、色々と今話題になっているカルロス・ゴーン 氏に対する日本の検察、警察の処遇にも通じるものがあるなと思って聞いていたら、やはりそのようなコメントを壇氏もされていた。日本の刑事裁判所は中世のようなもの、一度逮捕されたらその人の人生終わり=多分、世間の目が無罪であろうが一挙に冷たくなり、普通に生きていけなくなるということ?、だそうである。詳細はこちら、郷原弁護士がわかりやすく解説されている。カルロス・ゴーン 氏が逮捕された後、拘置所に長い期間拘留されたり、逃亡の直前まで監視の目の中自由がなく、家族とも一緒に暮らせなかったことを考えると、日本の検察や刑事司法が海外から批判されるのは当たり前だと思う。疑わしきは罰せずではなく、疑わしきは犯罪者同様の扱いして良い、みたいな考え方に見える。

Winnyを開発したために、こういう体験をされた被告の金子 勇氏は、無罪確定の約1年半後に、心筋梗塞で42才の若さで亡くなっている。これってやはり逮捕から8年の裁判での戦いで体にかなりのストレスがかかったことが影響しているのではないだろうか?

檀氏は、日本の著作権法にアメリカその他の国が導入しているフェアユースの論理(著作権侵害にあたるかどうかを、4つのファクターを考察して結論を導く、日本は著作権法に列挙される著作権侵害の例外にあたるか当たらないかでしか判断基準がない)についても触れていて、前述のNapsterの裁判はもちろん、このフェアユースに基づいて結論が導かれている。フェアユースについて私の持論を語ろうとすると長くなってしまうので、また別の機会に。いずれにしろ、今回のセッションは、日本のIT技術の遅れの要因、刑事事件の被告になることの恐ろしさを考える、貴重な時間であった。

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