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NY, Atlantaビジネストリップ- Atlanta編

前編でちょっと書いたんだけど、今回初めてAtlantaを訪れたのは、私が所属するAmerican Bar Association(アメリカ弁護士協会)のForum on Entertainment and Sports Industriesが主催する年一回のカンファレンスが今年はAtlanta開催だったからだ。今まではずっとラスベガスでやっていて、LAからも近くて便利だった。でも調べてみるとAtlantaは、何年も前からSouth of Hollywoodと呼ばれるほどスタジオが多くて、ここで撮影するとジョージア州の税金優遇を受けられる(州内での適格製作支出(base investment)に対し、20%の州所得税額控除、作品に州のプロモーションを入れると10%上乗せ。実務上は、エンドクレジットにジョージア州の桃のロゴを入れるのが代表的な方法で、合計最大30%。しかも上限なしで譲渡可能)。そのため、Netflix制作のドラマや映画の多くがAtlantaで撮影されているし、音楽でもHip HopはNYやシカゴ同様かそれ以上の勢いがあるらしい。一度事務所に相談に来てくれたHip Hop ArtistのTRiiiPSSも、アトランタ出身だ。

カンファレンス・プログラムの中にはオプションでSUNO(AIで音楽制作するアプリ)のGeneral Counselの話があったり、あのTylor Perry Studioの見学があったり、そしてこのオプションは参加者の知り合いなら弁護士でなくても参加可能(通常のプログラムも参加費用を出せば弁護士でなくても参加可能)。さすがABA攻めてるなーと思った。どうしても行ってみたいと思ったので、自分のスケジュールを無理やりこじ開けて参加することに決めた。

Atlanta自体は大都市ではあり、治安に関しては微妙、場所によるんだろうと思うが、カンファレンスはBuckheadという、ちょっと郊外の白人が多く住んでいるらしい(歩いていると微笑んでくれる老婦人をよく見かけた)ので、治安は問題なさそうだった。ホテルに到着してからホテルのチェックインまで時間があったので、近所のIndustriousにぷらぷら歩いて行って会議室で仕事。ここもスペースに余裕があるし、オフィスマネージャーが色々と気を使ってくれて、快適だった。NYのIndustriousはスペースは狭いし、ゴミはたまっているし、使用している人もなんだかツンツンしていて居心地よくなかったのとは雲泥の差。

そしてホテルに戻ってチェックインし、部屋に入ったら、リビングとバスルームと寝室が全部別々で私の東京のマンションより全然広い。テレビも寝室とリビングに2台ある。なのに宿泊代はNYのホテルの約半額。NYのホテルはMarriott Vacation Club、AtlantaはEmbassy Suites Hiltonなので、ホテルのランクは多分、同じようなもの。しかも朝食が付いている。これならIndustriousに行く必要もなかった、という快適さであった。Atlanta、初日から星5点である。

このカンファレンス、初日は7日の夜のウェルカムレセプションからだったのだけど、ネットワークイベントが大の苦手だし、色々とやることもあったのでレセプションはパス、朝もネットーワーキングイベントと称する朝食サービス(ご飯くらい静かに食べようよ)があったのだけど、ホテルで朝食をとってから参加。なお、それぞれのセッションに関しては、私自身がEnglish Nativeではないためプレゼンテーションマテリアルなしでスピーカーが喋るだけのセッションに関してはちゃんと聞き取れている自信がないし、時差ボケ睡眠不足でずっと眠くて集中力切らすと耳から英語が入ってこないこともあり、そしてそれぞれのプレゼンターのCopyright問題もあるので、内容については概要だけにしておきたい。

朝選んだプログラムは「Building Celebrity-Driven Brands」と「The AI Advantage:Transforming Investment & Valuation in Entertainment & Sports」。1番目は、セレブリティが商品タイアップする場合のブランディングだったり、イメージ戦略とセレブリティの顧問をやっている人の苦労話など。商品サイド、セレブリティサイド、Win-Winの関係だといいのだが、万が一相手方に問題が出た時のイメージやリブランディングは大変だろうなと思った。

2番目のセッションは、エンタメ業界の中で、各分野ごとにAIをどう活用しているかの紹介。こちらは資料がすごく多くて一言では説明し難いが、他の業界よりも多くの場面で使われいるんだろう。資料もたくさんあって、見ているだけで楽しい。面白いセッションだった。

次のセッションはランチを30分でガーっと食べた後にその場所でSunoのGeneral Counsel、Phil Castroと、ジャーナリストのJames Barberの会話を聞くもの。ABAが攻めてる、と思ったのがこういうControvertialな会社の顧問弁護士をゲストに呼んでしまうこと。Phil氏は本人自身がEntreplreneurで、新しいことをやるのが好きらしく、レコードレーベルからの訴訟対応もあるだろうに、さっぱりしたものだった。質問者のジャーナリストさんが古くからMusic Industryで生活をしている人で、彼がPhil氏に投げかける論点そのものがSunoが突破したかったものなのでは、と思って聞いていた。

午後は「Trends In Film Financing and Deal Making」「Beyond The Stream; Inside the Modern Music Business」「Winning at What Cost? Ethics and Professionalism Lessons from Hit TV Shows:”Suites”」を視聴。最初のセッションで登場したパネリスト4人のうち、3人がアトランタ在住。どの州が制作に関してインセンティブがあるかやアトランタでの融資を教えてくれて、これかなり面白かった。パネリストの1人、Randieさんとは、翌日のレセプションで話す機会があったのだが、彼女が勤めるCity National Bankにはエンタテインメントの部署に200人以上がいて、フィルム制作に関する顧客を抱えているそう。前述した通り、ジョージア州では州内で撮影をすると(もちろん他にも要件はあるけど)税金優遇があるのだが、CNBは、LAでもAtlantaでも映像制作会社に積極的に融資を行っているようで、利用しない手はないと思う。

2番目のセッションは音楽のストリーミングでのマネタイズについての討論。マテリアルが何もなく、メモは取っていたものの、その日5つめのセッションで、多分集中力もほぼ切れかけていたのか、話がよく思い出せない。Claudeに助けてもらったところ、「ストリーミング時代の音楽ビジネスを、配信、出版、ファイナンス、カタログ投資の立場から『お金と権利の流れ』として整理したパネル。MLCの実務、ロイヤリティ担保融資やカタログ証券化の契約上のポイント、配信事業者とのリスク分担、AIによる不正再生やメタデータ問題まで、実務的な論点が中心。」だそう。マテリアルの写真はいくつか撮影しているので、後でちゃんと理解しなくては。外国人参加者がほぼいないとはいえ、できたらマテリアルひとつくらいはアップしておいてほしかった。

3番目のセッションは、ドラマ「スーツ」のシーンを使いながら、これが倫理規定のどこに抵触するかというのをみんなで考えるというものだった。スーツは大好きなドラマでもあり、つまらなくなりがちな倫理のセッションをうまく説明してくれて、ありがたかった。1日に6つのセッションで、この後にAssembly Studio見学があったが、これはパス。今年は私以外はほぼみんな国内からの参加で、外国人は隣に座ってくれたので話をした、テネシーのナッシュビルからきた中国人の女性くらいだったかもしれない。こうやって朝から晩まで元気に喋り、セッションい参加できるアメリカ人の体力についていくには、体鍛えてよく食べるしかない。と言いつつ、晩御飯は日本から持ってきたレトルトのカレーとさとうのご飯。

2日目も朝食を食べながらネットワーキング、のイベントは予定通りスキップして、「Hot Topics & Emerging Issues in Art, Design and Museum Law」「Trial by Algorithm: Litigation and Reputation in the Information Era」を取った。最初のセッションはThomas氏のこともあるからと選んだのだが、連合記念碑の除去とか言論の自由の話が出てきてちょっと聞きたいものとは違った。隣の部屋の「Litigation Update」を取った方が良かったかなと後悔したものの、Litigationのセッションはマテリアルがあるので、後で読めるからいいやと自分に言い聞かせる。

2番目のセッションは、「Trial by Algorithm」というタイトルがなかなか含みを持たせたもので、陪審員がアルゴリズムになってしまった=エンタメ業界の訴訟では、判決より先にSNS上で”判決”が下されてしまう現実を扱ったパネル。生成AIやボット、組織的キャンペーンでネット世論が操作される中、本物の反応と人工的な動きを見分ける方法、PR会社と連携する際に秘匿特権をどう守るか、炎上時の法的・倫理的リスクなどが議論された。なかなか面白かった。

午後のセッションで取ったのは、「Audit in the Era of Digital Streaming」と、「At the Bargaining Table: The New Rules of Labor in Entertainment」。一つ目は、Digital Streamingでちゃんとライセンス料が支払われているかどうかを監査する会社のForensic Accountantがスピーカーの一人だった。こういうことをやるのもForensic Accountantであるということを知ったし、システムさえあれば自動計算できるのでは?と思っていたが、実際には入力データの間違い、契約解釈の問題、支払いが何層も重なる構造上の問題、明細に現れないお金が支払われているか、映像配信特有の問題などがあり、支払われる側がその中身を見るチャンスがほとんどない中で、しっかりしたAuditをやるニーズは確かにあるようだ。

2番目のセッションは、SAG-AFTRAのGeneral Counselも交えた、エンタメ業界の労働問題。AIの影響にも触れつつ、今後の見通しについての話だった。SAG-AFTRAのリゾースも見る機会となり、これ、パフォーマンスビザやアーティストビザ、アーティストとの契約などに非常に関係しているので、興味深く聴かせてもらった。

セッションの最後は、タイラー・ペリースタジオ見学。タイラー・ペリーは自身が女装して演じるマデアおばさんシリーズ(Ms.Madea)をはじめ、アメリカではドラマ・映画で多数のヒット作を持ち、スタジオを自分で所有しているという意味ではアメリカでは唯一かつ凄いアフリカ系アメリカ人。このスタジオは、2015年に市から買い取った330エーカーの軍用基地をスタジオにしたもので、なんと東京ドーム約29個分の広さらしい。12個ある各撮影スタジオには、黒人の有名俳優のそれぞれの名前がつけられている。ネットフリックスで見られる「ビューティー・イン・ブラック」というドラマも当然ここで撮影されている。このドラマに出てくるちゃっちいモーテルが見たかったのだが、それをガイドさん(実際はスタジオが募集したインターンシップに受かった、カレッジ卒業したての若い女性)に聞いたら、さっきそこ通り過ぎたよ、と言われてしまった、残念。ドアを開けるとちゃんと部屋になっているらしい。

また、軍用基地を私人が買い取ったということで、機密保持の観点から中の撮影は許可が出たところだけだし、SNSにあげるのは禁止。実際にまだ住んでいる人もいるらしい。タイラー・ペリーは全てをここで撮影するのが好きらしく、空港のターミナルを模した場所や、フェイクホワイトハウスもあって、なかなか楽しかった。前日のAssembly Studioに行った人の話によると、あちらは最新の設備が多いのと比べ、タイラー・ペリーの方はOld Styleだ、と言っていた。Atlantaにはここ以外にもまだたくさんスタジオがあり、いろんな撮影が行われているらしい。確かに、広大な場所なので、大規模なロケもAtlantaでは可能なんだろうなと思う。

スタジオからホテルに戻ったらレセプション。これに出るとまた知らない人とおしゃべりしないといけないのでほんとは出たくなかったんだけど、お腹も空いたし、私が一人で参加しているのを気にして、ホスト役にベテランエンタメロイヤーの人たちが何かと気を遣って他の人に私を紹介してくれたり、意外と話が弾んだりしたので、参加して良かった。実は2011年に初めてシカゴで開催されたABAのAnnual MeetingにForeign Associateという身分で参加したのだが、誰でもウェルカムのオープンな雰囲気を経験しつつ、「やっぱり弁護士になって、あの人たちの仲間になりたい」と一念発起してその後Bar Examに向けて作戦開始したのだった。「私のユニオンスクエア近くの事務所にはMusic Studioがついているのよ」なんてサラッというホストの一人、Music LawyerのJanine Smallさんにもお会いできて楽しかった。

Forumが終わった翌日は、Atlantaを観光しようと思って日本帰国をわざと翌々日にしていた。ところが、ハリケーンが南部を通り過ぎる影響で9日の夜から雨風がすごくなり、翌日はどう考えても外に出られないことが判明。本当はMidtownのBeltline BridgeやPonce City Marketをうろうろしたり、アトランタ出身のラッパーT.I.とそのクリエイティブチームが企画し、アート・ギャラリーとして多様な展示を備えたTrap Music Museumや、夜はCity Winery AtlantaでワインとHip Hop Musicを楽しもうと思っていたが、諦めて部屋で仕事をすることに。が、午後になると雨が小降りになり、風もだいぶ収まってきたので、外出を決意(というほどでもないけど)。2時過ぎていてお腹も空いていたので、Silom Thai & Sushi Barに行ってでタイ料理をお腹いっぱい食べ、その後近所にあるショッピングストリートのLenox Squareをぶらぶらして買い物をし、夕方ホテルに戻った。観光はできなかったけど、仕事と食事や買い物もできたし、ハリケーンで飛行機が遅れる心配をしないでいられたので、まあよしとしよう。

今回のNew YorkとAtlantaのビジネストリップ、久しぶりのNYで知人との再会や新たな出会いがあり、Atlantaではこの場所自体がエンタメ産業で潤い、今後もStreaming他のビジネスと共に伸びていく余地があること(なんせまだまだ土地が余っている)、AIやStreamingの法的な課題や方向性を学ぶ機会が得られたこと、無理して行って良かったと思う。Atlanta観光の予定は嵐とともに去りぬ、だったけれど、収穫はしっかりお土産として持ち帰れた。今回は最後まで時差ボケで辛い思いをしたが、西ではほぼ時差ボケなしなのが不思議。次に東海岸に行く機会があったら、西海岸経由で体内時計を慣らしてから挑むことにしよう。

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