先日WhatsAppを通じて「会社設立をしたい」とアメリカ人から連絡あり。WhatsAppに限らず、メール、メッセンジャーなどあらゆるSNSやアプリを通じてビジネスとは関係ないコンタクトがあるが、この人のメッセージは割と真剣だったので対応。WhatsAppで電話をして「どこで私の事務所を知ったのか?」と聞いてみたところ、「ChatGPTの推薦」との答え。知り合いの行政書士からは「ChatGPTから推薦してもらえるなんてすごいじゃないですか?」と言われたものの、ChatGPTで調べてくるような人は、大体が若者かSNSを駆使して仕事をしているようなタイプなので、あんまり商売には繋がらないのである。メッセージの内容を考えても、エアビー絡みの副収入で稼いだから日本でも同じようなビジネスがしたい、と学生に毛が2、3本生えたくらいの若者で、会社設立には極力お金をかけたくない、日本語はわからない=でも日本に移住したい、という典型的なStingy Typeの外国人だったので「お金を節約したいなら、他のプロに頼んだ方がいいよ」とお断り申し上げた。この人の場合、断ったすぐ後に(これもChatGPTの推薦かもしれないが)、Relocate Worldという私がAmbassadorをしているポータルサイトを通じてまた同じメッセージをしてきたので(同じIshibashiという名前だし、写真も確認できるのにしていない)ともかくビジネスマンとして確認するとか、もっと調査するというセンスに欠けているところを鑑みても、日本で仕事するのは無理とも思った。
問い合わせが多いので、書いておくけれど、今まで外国人の会社設立は大体本人が海外にいるまま、英語だけのコミュニケーションでかなり手掛けては来たものの、最初から詳細もわからないのに見積もりを出せ、という外国人の相談には乗らないことにしている。どんなビジネスをしたいのか、在留申請やビジネスライセンスは必要なのか、場合によっては日本銀行への事前の届出も必要になるので、話を聞かないことには見積もりは出せない。ただ、話を聞く過程における私のアドバイスはノウハウだらけなので、無料でコンサルティングをすると情報ただ乗りされて終わってしまう可能性があり、当初から3万円(プラス消費税)をいただいている。また、会社設立+在留申請+ビジネスライセンスというのは、それなりに私の経験と知識がないとできないものであり単なるプロセスではない。保証人みたく日常のお世話係をさせられることも多いのと、法人口座ができるまで長い時は1年以上も自分の預かり金口座に入れて資本金500万円以上を保管させられる割に、税理士と違って設立後に顧問として付き合いができる可能性も低いので、膨大な時間と手間がかかることに対して、全く割に合わないのである。この業務の金額をディスカウントして手伝うくらいなら、お断りして私のサービスを評価してくれるお客様の仕事をやらせてもらう方がいい。
SNSといえば、アメリカのESTAやビザ申請の時にはSNSのアカウントが求められるようになっている。実際に義務化されたのは2019年からだが、2025年6月から、米国務省は学生(F/M/J)ビザ申請者に対し、SNSを「公開設定(public)」にするよう指示したので、限定公開や非公開アカウントは「情報隠蔽」と判断される可能性がある。この記入欄を空欄で出すと、追加書類として要求されるらしい。今時SNSを一切やってないのに渡米しようと思う人なんていないだろうから、隠そうとしても無駄だろう。
アメリカドラマを見ればこの作業で実際に本人特定しているのを見ることもあると思う。このSNSのアカウント記入の目的は多分言論弾圧などではなく、本人確認と、SNSでアップした記事と本人の渡米目的があっているかを確認するもの。過去に1. 学生として渡米したのに「Uberドライバー始めた(学生は校外での就労は原則禁止)」→更新拒否、2. 「アメリカ政府を破壊したい」とジョークで書いたらESTAが拒否され、B Visa申請で審査長期化、3. ESTAでは弁護士と書いているのに、LinkedInではマーケッターと書いていた→ビザ審査長期化など、なんでバレないと思うんだろうという単純な例が多い。SNSでは素の自分を出す人が多いため、本人確認、渡米の本当の目的などの確認をが簡単に取れてしまうようだ。国境警備局(CBP)がチームで確認しているらしい。
以前、ハワイにYouTuberが取材目的なのにESTAで入国しようとして拒絶されたことがモーニングショーか何かで話題になってたけど、これなんて、YouTubeのアカウントで、世界各国でビザもないのに取材してそれをYouTubeにアップし、金銭を得ていたとなれば、一目瞭然。入国以前に、ESTAではじかれてもおかしくない。先日もネットの相談で、ESTAの目的外入国(=虚偽申請)をばれるわけがない、と言っている相談者がいたけど、そんなにCBPは甘くない。騙そうと思うなら、自分のSNSのフォロワーからの承認欲求と相談して、全て秘密裏にやる必要があり、でもそんなこと考えるくらいなら、自分の行動と書類記入の整合性を取ればいいだけであって、簡単な話である、いずれにしろ、SNSがなかった頃に比べたら、CBPも個々の外国人について、かなり調査しやすくなったんだろうな。
会社設立がホームページからの問い合わせが多いのと比較して、不思議にも、在留申請単体でのお問い合わせはほぼあ100%知り合いか、過去にお手伝いをしたクライアントからのご紹介である。日本に来日する外国人が激増していることもあるけれど、実に色々なタイプの在留申請のお問い合わせがくる。で、その半分くらいは難しい案件なんだけど、最近は会社で定期的に依頼してくださるところもあり、非常にありがたい。ありがたいのであるが、その反面、海外に行くときに大変な思いをすることになる。なぜかというと、在留申請にはオンラインと入管に行って対面での提出があるのだが、
1. オンライン申請のサイトは、海外からのアクセスが禁じられている
2. 永住や高度人材ポイント制の使用は、オンライン申請ができないことになっている
3.オンラインで申請しても更新・変更の場合カードの送付が郵便、それ以外にも対面で提出したもの通知は郵便
だからである。オンラインについては、海外からアクセスがIP アドレスの所在で制限されているならVPN購入してアクセスしようかと思ったが、AIに「そもそも海外からのアクセスが禁じられているので、やめた方がいい」とアドバイスされた。何で?申請が基本的に3ヶ月前からしかできなかったり、更新・変更は日本での滞在期間でないと申請できないのは理解できるが、申請取次の資格を持つプロが日本にいないと申請できないというのは納得できない。ここで騒いでも仕方ないので、機会を見つけてクレームを入れてみようと思うのだが、システムの方で申請者で選り分けることは難しくないはず。リモートを推進する世の流れに逆らう動きなので、ぜひ改善していただきたい。また、永住や高度人材の書類を対面でしか提出できないのも本当に不便。対面で書類を提出しても、COEを郵送ではなくメール送付を選ぶことが可能になったのは良かったけど、在留という国境を跨ぐプロセスを実施している外務省・法務省管轄の在留制度が今も対面を重視し、職員の人たちと電話と対面でしかやり取りできないのは、海外のビザ制度を見ても遅れすぎである。
この辺りの業務はアシスタントにお願いすればいいではないかと思う方がいるかもしれないが、オンラインでも紙の申請書でも、申請取次の資格を持たない補助者に手伝ってもらうことは禁止されているし、書類を持って行ったりカードを受け取るのも有資格者でないとできない。代わりに後輩の行政書士にオンラインで申請してもらうとすると、本人の履歴、許可率に私のクライアントの許可・不許可が影響される恐れがある。また、入管に書類申請やカードを取りに行ってもらう際には、お客さんと後輩の両方から了解をとって、3者の委任状を発行せねばならず、とてつもなく面倒臭い。色々なアシスト業務はAIの方が優秀だったりするので、在留申請のためだけに法人化して有資格者を雇用するのも効率が悪い。
上記のような経過があって、当初はUSのIshibashi, Larkin, Shibata Lawの業務面での開発やマーケティング、ネットワーク構築のために2週間から1ヶ月位はLAに滞在したいと思っていたのだが、1週間以上日本を空けると在留の仕事が立ちいかなくなるため、現在はパラパラと渡米している。短い滞在では仕事がちっとも捗らず、結局LAでも日本の仕事をやっているし、都度の飛行機代をホテル代がのしかかってくる。とはいうものの、難しい在留申請については他の行政書士にお任せすることなく業務は続けたく、今後の日米での業務バランスをどうしたもんだろう、と思っている。