2025年10月16日より、外国人が会社を設立し、経営・管理の在留資格を得て事業を行うにあたり、要件が厳格化されレることになった。要件の変更及び追加で1. 資本金が最低500万円から3,000万円へ、2. 日本人又は永住している外国人を最低1人雇用すること、3. 会社経営の経験が3年以上、又は経営の修士か博士を持っていること、4. ビジネスプランの専門家チェック、5. 本人か雇用者が日本での生活を行えるに十分な日本語の知識を持っていること、である。正式な文書はこちら。そもそも今までが緩すぎだったのだ。が、早く取得しておいて良かったにはならない。今までの要件で在住する外国人はすぐにではないものの、三年以内に新しい要件を満たさないと更新できなくなる。要件厳格化の原因は、日本に住むことを目的として架空のビジネスを作るような外国人排除が目的。でも突然厳しくされたら本当にビジネスしたい人が来られなくなる懸念がある。そのいう人達向けの提案なのだが、日本でなくアメリカで会社設立するのはどうだろう?日本でビジネスをするより、アメリカでビジネスをする方がずっと楽である。その理由を以下に書いておきたい。
行政書士として多分100社以上の外国人の会社設立に関わったと思うだが、いまだに日本で会社設立するのは恐ろしく面倒臭い。順番として
(1) 会社の構造- 目的、メンバー、本店の場所、決算期- などを決めて定款を作成。
(2) 公証役場にドラフトを見せて、OKをもらったら電子署名して、電子申請し、製本した定款と委任状をくっつけて、それにクライアントのハンコを押してもらい、関係者の印鑑証明書等をもらって、公証役場で認証、定款の謄本をもらう
(3) 定款認証後に資本金の振込みをクライアント自身の口座、又は委託した人の口座に振り込んでもらい、その払込を証明する書類他を準備して登記(登記は司法書士の仕事)
これ以外にも本店とする事務所のリース契約、法人実印の作成、実質的支配者の確認などもある。設立登記が出来上がると、その後、税理士に開設届を提出してもらい、証明書が在留申請に必要になるので、税理士のコーディネートも必要。
翻ってアメリカではほとんどの州で、州のSecretary of Stateにオンラインシステムに必要事項を入れて、申請料を払えば設立届出は終わり。もちろんCorporationの設立に関しては資本金や株単価、Board Memberなどは申請より前に決めておく必要あるけれど、資本金の額を額面として見せる必要もなく、カリフォルニア州だと会社目的も必要がない。「法人税払ってくれればそれでいいです、あとは合法なことなら好きにやって」みたいな感覚がデフォルト。あまりにも違いすぎる。
日本の銀行がなぜあんなにうるさいのかわからないのだが、私はなるべく口座開設がスムーズに行くようなアドバイスをして会社設立をしているにも関わらず、外国人が1人代表取締役の場合、スムーズに法人口座が開設できたという話を聞いたことがない。口座開設ができなければ日本での取引ができない。経営・管理の在留資格は初年度はほぼ1年で在留期限が来るので、更新申請の時にビジネスが軌道に乗ってないのが法人口座の開設ができなかったから、というセリフを何度書いたかわからない。以前、UKの人材紹介会社の日本代表をやっていた時に、設立後すぐに三菱UFJに口座開設依頼に行ったところ、「なぜ必要なのか」と聞かれ、「取引ができないから」と答えたところ、「契約書や、取引が必要という証拠を出せ」と言われたことがある。取引を始めるために口座開設に行ったのに、無理やり取引を作れとのリクエストである。メールでクライアントである大手IT会社との英語でのやり取りを取引の証拠として提出したものの、結局、人材紹介のライセンスが取れるまでは口座は必要ないと断定されて結局設立から半年くらい口座が作れず、コンサルティングでクライアントから報酬を頂くことすらできなかった。(当然その後クライアントには、一番行かない方が良い銀行とコメントしている)。日本人が代表でこうなのだから、外国人が代表である場合にはおして知るべし、である。また、こういう反応をするのは三菱だけではない。何を守りたいのか全く不明、人様から預かったお金を運用して儲けているにもかかわらず、お金を預けて取引しようとしている会社の口座開設を頑なに拒むのが日本の銀行である。
一方、アメリカの場合、代表またはパートナーが揃って銀行まで出向き、登記書類、Operating Agreement、Business Licenseなどを見せれば、それ以上何か言われることもなく口座開設できる。オンラインやアプリでの取引もシンプルで簡単、というか基本来訪してほしくないのか、一度銀行を訪れたらその後行く必要はほとんどない。また、別ブログに書いたが、MercuryやWiseという取引システムで口座開設するには、必要書類のアップと、オンラインでのカメラによる本人確認のみ。マイナンバーカートやパスポートには本人確認のためのICチップが入っているのだから、それで十分なんだろう。Mercuryを利用すると、取引記録その他、画面のなかで色々なグラフを作ることもできる。又、アメリカの銀行間での取引は、日本と違ってテレビ電話とか、銀行来訪などという面倒なことを言われず、オンラインで5秒もかからず送金受金も可能。こうやって日本および日本の銀行はシステム的にも世界から取り残されてしまったんだろうな、というのがよくわかる。
日本の場合、法務局のオンライン稼働は平日の8時半から21時、17時以降に申請したら、後の処理は翌日。在留申請のオンラインは24時間利用できると謳っているがサポートは平日のみ、海外からのアクセスは不可。また、官公庁のオンラインシステムは申請後の修正や質問は、担当者がメールアドレスを持たないために、電話がかかってきたり、書類追完や結果は郵送で送られてくることが多い。だから、手続き・許認可の仕事は日本にいる誰かを窓口にしない限り、海外で行うことはほぼ無理である。
一方、アメリカの場合、連邦や州の手続きはほぼ全部オンラインで済むし、郵便料金だってオンラインで支払えるから、郵便局に足をはこぶ必要はない。オンライン申請の連絡は大体はオンラインやメールで連絡が来る。せっつかないといけない時は電話で直談判するけど、日本からリモートでアクセスでも十分通常の仕事はできる。アメリカでしか作動しないシステムはVPNでアメリカのサーバーに接続すればいい。だから、アメリカで会社設立しても、その後のビジネスを国外で行うことは十分可能である。
日本でビジネスするより、アメリカは簡単、ということを散々書いてきたけれど、最後にアメリカで投資家ビザを取得するのは日本より簡単なのか?について記述する。ここで書くのは、EB-5のような高額な投資ビザではなく通常の投資家ビザの話。
日本の経営・管理の要件である資本金3,000万円、1人以上の雇用という要件については、アメリカの投資家ビザもそれほど違いはない。アメリカの投資家ビザE2は、100,000-200,000ドルくらいの投資(資本金である必要はない、使えばいいのである)、雇用についてはトランプ政権になってから厳しくなり、1人ではなく2人雇用しないとアメリカ経済へのインパクトあり、と認めてくれないらしい。でも、日本と違って、経営経験の証明とか、語学能力の証明などはいらない。そして、上記のように、日本だと最初から在留資格を持って信用を得るためと、自らが取引先を開拓、契約交渉するような過程が必要なのだけれど、アメリカで会社を設立すれば、ビジネスをリモートで行うことは十分可能である。会社設立をしてビジネスが軌道に乗るまでは、現地のアメリカ人に働いてもらって報酬を支払い、自分は株主として配当だけを得ればいいのである。最初から経営・管理の資格を取って日本に在留しようとすると、なかなかビジネスがスムーズに運ばず苦労することになり、結果母国に帰ってしまう、そのために会社を閉鎖した人たちが何人もいる。自分自身が手伝った会社がなくなったり、責任者が母国に帰ってしまうのを見るのは本当に残念。
一方、アメリカでは準備期間にはビザなしでリモートでオペレーションし、軌道にのって、将来と数字が見えてきたところでビザ申請をすればいいのである。ビジネスが軌道に乗ってアメリカ経済へのインパクト証明できないと逆にビザ申請が通らないし。もちろん、日本でもアメリカでも就労が可能がビザ・在留資格がない限り、報酬を得て現地で働くことは許されていないので、そこは細心の注意を払い、専門家に相談して欲しい。
そう言われても、たとえ要件が厳しくなったとしても日本で起業したいという方、又はアメリカでビジネスをすることに興味がわいてきた方、当職にご連絡ください。