アメリカに渡米して勉強、仕事をしたい方のために、現在の非移民系のビザの状況をざっと書いておく。トランプ政権の’Zero Torelance” Immigraiton Polityの影響なのか、全体的に前にも増してビザ申請の厳格化がなされているからだ。
本来ならアメリカのビザはIshibashi, Larkin, and Shibata Lawの業務領域なのだが、ILS Lawのホームページがまだ英語版しか開設できていないし、日本の方向けなので英語版に載せても意味がないので、日本語版開設までの間はここに仮置きしておく。
*2025年の8月10日現在での情報に基づいて書いているので、その後の改正で変更される可能性があることをご留意いただきたい。
2025年8月5日、DOS (米国国防省)はB1/B2 ビザ申請者向けに12ヶ月のビザボンドパイロットプログラムを開始。このプログラムにより、特定のB Visa申請者向けに最大15,000ドルの保証金を要求することが可能。これは申請者の中で特に不法滞在リスクが高いと判断された場合、申請者が米国滞在後に帰国するという意思を保証するための措置。
そもそも最近では、逮捕歴や不法就労の前歴がある場合には、アメリカ大使館での面接だけで終わらず申請者の背景調査が必要と判断され、行政処理(Administrative Processing)に回され、DOSやFBI, 移民局などの関連機関で詳細な審査が行われ、このプロセスに数週間から数ヶ月に及ぶため、ビザ発給が遅れるか却下される可能性が高い。
そもそもB Visaを取得する人のかなりの人たちが、90日間以上アメリカに滞在したいという目的ではなく、ESTAで入国ができないためにB Visa取得を試みているのだと思うのだが、B Visaすらも簡単に取得できないという現実は、過去に逮捕・不法就労などの履歴がある人がアメリカに入国することを益々困難にしているとも言える。
日本人のF-1 Visa許可率はほぼ90%で、今まではそれほど取得が難しいとは考えていなかった。しかしながら、オンラインでのご相談で、語学学校のF1申請をして断られた、という方が何人もいて、アメリカも厳しくなったものだと思ったのだった。語学学校への入学は学位取得を目的としているわけではなく、英語を勉強したいなら国内でも良いし、アメリカでなくても済むわけで、留学が本当に必要なのか、移民や不法就労を考えているのではないかという疑いを持たれないようにしないといけない。よって、大学、大学院入学予定者よりも語学学校への留学者は、留学後に母国に帰国する意図を明確に示す必要がある。語学学校では「フルタイム学習」(週18時間の教室授業又は週22時間の非教室授業、オンラインはカウントされない)を維持する意思や能力を示せない場合、拒否リスクが高まる。
また、銀行の残高は、留学中の滞在費用を補えるだけのものを準備しなければならない。サンフランシスコやニューヨークなどの都市部に留学する予定の申請者は、1年間で20,000-40,000ドルくらい、地方都市ではもう少し低く10,000-15,000ドル必要である。これもご相談であったのだが、銀行の残高が多すぎてもまた将来的に移民、不法滞在の意思があるように思われて拒絶される可能性があるので注意されたい。特に語学学校の場合には、学業目的が不明瞭に見えるため、永住の意図があると勘違いされないよう、そこそこの金額を残高として見せた方がいいと思う。
それと、F-1が比較的取得しやすいので、入国にはF1を利用し、その後他のビザに変更をしようとする方も多い。大学や大学院を卒業しても、H-1Bを取得するのは後述のとおり難しいため、E1,2などの投資ビザに切り替えたいと思う方もいると思う。ただ、F-1 Visaの申請時に大使館やCBP (国境保護局)が本当の目的はE-2や永住では?と疑うと、F-1 Visa自体も拒否される可能性が高い。特に語学学校での短期間のF-1 Visa申請後、すぐにE-2ビザの申請準備を始めるのは危うい。F-1 Visaで入国後、米国でE-2 Visaへのステータス変更(Adjustment of Status, AOS)を申請しても、認められない場合が多く、不法滞在とみなされる可能性もあるため、注意してほしい。E-2 Visaを目指すなら、日本で投資計画を進め、米国大使館で直接E-2申請した方がいい。F-1 VisaをE-2の足掛かりにしないように。
H-1Bについては、法律改正が2025年1月に発効している。変更の要旨ははH-1Bプログラムの効率化、柔軟性向上、プログラムの公正強化である。申請費用、プレミアム処理費用、そして登録費用も増額予定と容赦ない。また、専門職の定義を明確して複数の学位分野が職務に関連する場合に認められる範囲を拡大したり、非営利研究機関や政府研究機関はもともとキャップ免除であったが、このキャップ免除の定義を拡大した。それ以外で、Beneficiary Centric Selection Process (受益者中心の選考)、Beneficiary Owners Rule (受益者所有者ルール)があるので、こちらは下記にもう少し詳しく書いておく。
H-1B Visaは、春に登録申請、申請者の数が予定人数より多い場合には抽選となるが、この抽選が、登録全体ではなく、個々の申請者に基づく方式に変更された。今までは抽選に当たる確率を上げるために複数登録をする申請者が多くいたが、改正により、複数登録が明らかになった場合には登録や請願却下など厳しい措置をとることにより不正を防止し、抽選の公平性を向上させた。また、登録時に有効なパスポート又は渡航書類の情報提出が必須になった。
今まではH-1Bは一般的に会社が外国人を採用したい場合に使われるのが一般的であったが、今回の改正により、主に以下の要件を満たせば、請願企業の50%超の所有権や議決権を持つ者がH-1Bの申請者になれることになった
i) 申請者が「専門職(=大学卒業以上の学歴が必要とされるような)」の業務を組織の中で50%以上行うこと
ii) 企業が受益者の雇用、解雇、職務監督などのコントロール権限を持つことを示す書類を提出すること=本人が役員であれば、他の役員が取締役会で申請者を監督するなど
iii) 受け取る報酬は、勤務する地区で同様の業務に従事した場合の平均以上であること- 労働条件証明書を提出して、認めてもらう必要があり、これに重大な変更がある場合には、事前に改正請願の提出が義務化されている
なお、初期申請および初回延長は18ヶ月に限定される。
後述するEやLの取得が難しい中小企業の場合には、H-1Bに挑戦することは可能。だが、要件ii)の賃金をずっと維持し続けないといけないわけで、普通に創業したばかりの会社が自分にローカルエリアの平均給与以上の賃金を支払えるのか?というところがミソである。その賃金にかかる税金支払いによって、Visaの取得が可能になっているわけなので、小規模な会社が取得するには、こちらも簡単とは言い難いものがある。
投資家ビザは、日本を含むアメリカとの条約国の国民が米国で事業を運営・投資するために取得するビザであり、のもともと日系の企業は取得しやすいものであるとされていた。が、最近中小企業の拒否率が上がっているらしい。日本人申請者のE-2の承認率は、2023年で89.43%、2024年で80%、10万ドルの中小企業申請の拒否率は20-30%と推定される(明確なデータはない)。投資額については明確な最低投資額は発表されていないものの、通常10万ドル以上とされていたものの、今は最低15-20万ドルの投資が推奨される。コンサルティングやフランチャイズ事業だと当初は10万ドルでビジネスプランを書くことは可能だが、最初から2人は雇用済、5年以内に3-4人の米国人雇用が必要。となると全然10万ドルでは足りない。レストラン、小売、製造業などの高コスト事業では、言わずもがな。日本では経営・管理の在留資格がこれに当たるが、今後は資本金3,000万円・日本人一人を雇用、が要件になるらしいが、結局、投資という言葉通り、リスクを負って、その国の経済にどれだけ貢献できるか、という部分がより厳格にチェックされるようになったんだろう。
日系企業が米国に子会社を設立する場合には、マネージャー/役員(L-1A)又は専門知識を持つ従業員(L-1B)を転勤させる場合に必要になるビザ。こちらもE-2同様、中小企業でも利用は可能だが、大企業に比べ審査が厳しい。背景調査や真正な雇用関係の証明が厳格化されている。L-1 Visaの全体拒否率は2023年で約30%、中小企業では35-40%(推定)、資本金20万ドル以上、雇用3-5人を計画した場合、成功率は60-70%(推定)に上がる。
こちらもE-2同様に必要な資本金の定めはないのだが、米国子会社の事業の実体性を証明する必要があり、大企業だと100万ドルが一般的なところ、中小企業の場合には20-50万ドル推奨。E-2同様、しっかりしたビジネスプランで、アメリカへの貢献具合を説明することが必須である。
書いていて思うのは、アメリカはお金持ちを除き、全然日本人求めてないな、ということ。優遇されていたはずのビザでも厳格化されていて、どれをとっても容易区とれるものが一つもない。日本と違ってアメリカは移民によって作られた国なのに、早いものガチ、今は椅子とりゲーム状態なんだろうな。他にもO, EB5など取得可能なビザもあるし、法律もどんどん変わるので、ご興味ある方はこちらまでお問合せください。